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ている太夫と三味線師との著作権の譲渡についての接渉が半年にわたって行われた。
太夫も三味線師もいずれも当代の名人ばかりであったが、当初館長が引退直前の竹本越路太夫師と面識があったために、同師に書簡を送り、許可を願ったところ快諾を得たことが有効に働き、譲渡は極めて円満に行われた。
これによって清和村では本格的な練習を開始し、劇場側も1曲が仕上るたびに、まず熊本県立劇場演劇ホールに、それまでの布切れ1枚を背景にして寒む寒むと演じていたのとうって変って、本式の舞台を組み、超満員の観客を前に上演して成功を収めた。
何よりも驚いたのは熊本県民で、それまで県内にこのような人形芝居が存在していたことも知らず、それ以前に、清和という村が県のどこにあるのかすら知らなかったのであった。
さらに劇場は県民の支持を広く確得して、将来の継持につなげる目的で、牛深市、本渡市、津奈木町で、遂年に上演した。
その一方、村の若者が徳島の阿波人形浄瑠璃に入門し、義太夫の辛い修業に耐え、3年後に弾き語りが出来るようになって帰郷した。
劇場はテレビ視聴に十分に応えられる段階にまで技術が向上するのを2年間辛抱強く待った。

 

そして、平成2年10月27日、砥用町勢井神社境内の野舞台で、高張り提灯を連ね、竹で作った桟敷に、山中にもかかわらず、重箱の楽しい弁当を持って集った800人の観客を前に、素晴らしい日本的風景を演出しながら、午後5時から8時まで上演し、これがNHKの衛星放送の電波に乗って生中継され、ここに清和村人形浄瑠璃芝居は全国的評価を得るに至った。

 

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清和村 村立「文楽館」と手前併設の「資料館」

 

 

 

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